作業療法科の訓練について

従来の上肢機能訓練

さまざまな道具を用いて、物の握り離しの練習や指先の細かい動きの練習を行います。また、両手を用いて、麻痺のある手と協調した動きを引き出します。腕の力が弱い患者様には、腕を空間に持ち上げる力を補助する「ポータブルスプリングバランサー」を使用して、「物に手を伸ばして握り、別の目標まで運ぶ練習」を行います。

上肢機能訓練

指先でのつまみの練習

上肢機能訓練

両手動作の練習

上肢機能訓練

ポータブルスプリングバランサー
を用いた練習

回復期CI療法

脳卒中によって腕や手に麻痺が残った患者様は、麻痺のない方の手で日常生活を概ね自立して行うことができます。そのため、次第に麻痺した手を使わなくなっていき、本来はもっと使えるはずの手が次第に使えなくなってしまう、ということが知られています。CI療法は、このような問題を解決するために米国で開発された治療法です。

回復期CI療法

肩や肘などに対する訓練場面

回復期CI療法

手や手指に対する訓練場面

CI療法の原法は、起床時間の90%は麻痺のない方の手を拘束して、1日6時間の集中訓練を2週間実施する方法で行われていますが、1日の実施時間を短くしても十分な効果が期待できることや、麻痺のない方の手を拘束せず両手動作を積極的に実施することで訓練効果に大差がないことなどが様々な実践と研究が報告されています。

CI療法は脳卒中治療ガイドライン2015において推奨グレードA(行うことが強く勧められている)で掲載されている科学的根拠が確立した治療法です。

当院では両手動作を積極的に取り入れながら、1日3時間を週5日、3週間継続してCI療法を実施しています。

CI療法を通して、入院中から麻痺した腕や手を積極的に訓練し、病棟生活において様々な場面で麻痺した手を使っていただくことで、腕や手の使い方を患者様ご自身で学んでいただきます。

また、適応を検討し、HANDS療法とCI療法を併用した訓練を実施しています。

当院におけるCI療法は、主に脳卒中後の片方の手の麻痺がある入院患者様で、手指の動きがわずかに可能で、小さなものをつまんだり離したりといった動作が部分的にでも可能な方が対象となります。その他、詳細な適用条件がございますので主治医・担当療法士にご相談をお願いします。

HANDS療法

HANDS療法


HANDS療法

HANDS(Hybrid Assistive Neuromuscular Dynamic Stimulation)療法は、脳卒中後に中等度〜重度の手の麻痺が残存している患者様を対象として、日常生活における手の実用性の改善を目的に、随意運動介助型電気刺激装置(integrated volitional control electrical stimulator: IVES)と上肢装具を1日8時間装着し、3週間行う治療法です。

脳卒中治療ガイドライン2015において、電気刺激療法は推奨グレードB(行うことが勧められている)で掲載されており、HANDS療法はその1つとして科学的根拠の示された治療法です。

HANDS療法後も継続して麻痺した手を生活内で使っていくためには、運動回数が一定以上を超える必要があります。治療期間中は、病棟生活においても積極的に麻痺した手を使っていただくことが重要となります。訓練以外の時間の日常生活でも麻痺した手を使っていただくための指導も行います。

HANDS療法は、主に脳卒中後の片方の手の麻痺がある入院患者様で、指を伸ばす力が不十分なため訓練や日常生活が困難となっている方が対象となります。その他、詳細な適用条件がございますので主治医・担当療法士にご相談をお願いします。

上肢用ロボット型運動訓練装置 Reo Go®-J

脳卒中後に重度〜中等度の上肢麻痺が残存した患者様に対し、ロボット支援訓練と作業療法を併用することで、より効果的な治療成果が得られることが報告されています。

作業療法士がロボットを道具として訓練の一部に活用することで、運動麻痺の重症度や回復過程に応じて、最適な訓練条件を設定することができます。

ロボットの最大の特徴は、同一の運動を一定の介助量で何度も反復することができる点にあります。ロボットを患者様自らの意思でコントロールして上肢を動かすことにより、より主体的にリハビリに取り組むことができます。

上肢用ロボット型運動訓練装置

当院では,ロボット支援訓練として、平成30年1月現在、臨床試験に参加されている方を対象として、Reo Go-Jを使用しています。Reo Go-Jは、Motorika社(イスラエル)製の上肢訓練支援ロボットReo therapy system®を帝人ファーマが日本向けに開発したものです。

Reo Go-Jは伸縮するジョイスティック構造のアームを持つ機器で、患者様は機器の側方に座り、前方のディスプレイに表示されるターゲットに合わせて、アームを随意的に操作します。三次元の運動支援が可能で、訓練パターンやモードを柔軟に多彩に選択できるのが特徴です。

Reo Go-Jを自主訓練として積極的に使用することで、上肢近位部(肩・肘・前腕)の機能が向上することが報告されています。

一方、ロボット支援訓練のみでは、日常生活で実際に麻痺した上肢を使用することが困難であることも数多くの研究結果から明らかとなっています。運動機能が改善してきた上肢を、どのように日常生活の中で使用していけばよいのか、作業療法士と協力して問題解決に取り組むことで、より実用的な訓練効果を得ることが期待できます。

※平成30年1月現在、臨床試験に参加されている方を対象として使用しております。

半側空間無視に対する訓練(プリズム適応療法)

半側空間無視

ヒトの空間的な注意機能は、右脳が優れていることが知られています。
脳卒中により右脳に障害をきたすと、空間的な注意機能は全般的に低下し、左右の脳でアンバランスが生じます。

これにより、空間的な注意が右方向に偏り、左空間を無視する半側空間無視という症状が生じます。

半側空間無視は、右脳の損傷によって起こることが多く、右脳損傷者の4割程度に認められるとされ、脳卒中後の高次脳機能障害として比較的頻度の高い病態です。

半側空間無視の発症機序についてはいまだ未解明ですが、脳卒中リハビリにおいて、無視の存在は機能獲得を阻害する重大な要因としてあげられます。

プリズム適応療法

プリズム適応(prism adaptation: PA)では、プリズム眼鏡により視野を右にずらした状態を作り出します。

最初に物が見える位置と実際の位置、上枝の動きが一致しないため、目標とずれた位置に向かって腕を伸ばそうとしますが、動作を繰り返すと正確に目標に向かって腕を伸ばせるようになります。

この現象を無視のリハビリに応用したものがPA療法です。PA療法は、視覚のズレと、ズレを修正しようとする運動企図の両方に影響を与え、他の方法に比べて少ない回数で治療効果が長く持続すること、大掛かりな装置を必要としないことから、実際の臨床場面に応用可能な方法として注目されています。

PA療法の効果は、検査結果の改善にとどまらず、立位のバランスや車いす駆動など日常生活に近い側面で改善が報告されています。また、回復期に当たる発症1〜3ヶ月の無視を有する患者様に対して、1日2回(1回に10〜15分)、週5日、2週間のPA療法を行うことによって、日常生活の能力が改善したという報告もあります。

無視の徴候が認められた場合、早期にPA療法を行い、その後も動作訓練などのリハビリを継続することにより退院時の日常生活に良い効果を与えことが期待できます。

プリズム適応療法

プリズム適応療法の様子

プリズム適応療法

日常生活活動の支援

当院では、「安静度評価表」を用いた移乗・トイレの自立支援、「一般浴評価表」を用いた入浴支援など、患者様一人ひとりの状態を適切に把握しながら、日常生活の自立を目指した効率的・効果的な支援を実施しています。

安静度評価表を用いた移乗・トイレの自立支援

当院へ入院時、移動手段として車いすを使用している患者様が多くいらっしゃいます。退院へ向けて、まず病室において身辺動作を自立することから始まります。そこで、最も重要となるのが「車いすとベッドの移乗自立」と「トイレの自立」です。

これらは、移乗能力だけでなく、車いすの操作やドアの開閉など、いくつもの工程から構成される一連の動作として捉えていく必要があります。

当院では、独自に移乗・トイレ動作評価表を作成し、医師・看護師・理学療法士・作業療法士が協力して、患者様の自立度を評価し、安全に自移乗やトイレを行えるよう支援しています。

一般浴評価表を用いた入浴の自立支援

当院の入浴形態は、以下の3つです。

ストレッチャー浴 ストレッチャーに横になった状態でシャワーのみ行います。
リフト浴 シャワーキャリーに乗車し、座った状態でリフト式の浴槽へ入ります。
一般浴 洗い場までの移動・浴槽の出入りを患者様ご自身で行います。

退院後ご自宅で入浴ができるよう、医師・看護師・理学療法士・ケアスタッフ(介護士)と連携して、一般浴に移行するための入浴評価・訓練を行います。

シミュレーション機器を使用したトイレ・入浴訓練

1Fリハビリセンターには、トイレ動作と入浴動作を模擬的に訓練できるシミュレーション機器を設置しています。
自宅環境を想定した訓練や患者様の状態に合わせた段階的な訓練プログラムを実施しています。

シミュレーション機器を使用したトイレ訓練

シミュレーション機器を使用した入浴訓練

就労支援

ワークサンプル幕張版

当院では就労支援を適切に実施するために、ワークサンプル幕張版(MWS)を導入しています。

MWSは、障害者職業総合センターにより「精神障害者等を中心とする職業リハビリテーション技法に関する総合的な研究」として開発された「職場適応促進のためのトータルパッケージ」です。

OA作業、事務作業、実務作業に大別される13種類の作業課題から構成されており、すべての障害種類に対応でき、職業評価ツールとしてだけでなく、訓練ツールとしての活用も大いに期待できます。

OA作業 数値入力、文書入力、コピー&ペースト、検索修正、ファイル整理
事務作業 数値チェック、物品請求書作成、作業日報集計、ラベル作成
実務作業 ナプキン折り、ピッキング、重さ計測、プラグ・タップ組立