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就労支援 Employment Support

当院入院中から退院後の就労支援について

家庭で日常生活を送ることも社会復帰の1つですが、お仕事をされていた方ではその一歩先の目標として「職場への復帰」がとても重要な課題となってきます。

病前までのお仕事内容、通勤環境、職場側の受け入れ体制や制度、雇用契約内容、ご病気による障害の種類や重症度など、職場復帰には様々なことが影響します。患者さんごとにその状況も大きく異なるため、復職に必要なリハビリテーション、復職の適切なタイミングや支援の内容は、個々の患者さんに応じてオーダーメイドに行っていく必要があります。

就労において何らかの問題や不安を抱えておられる方は、当院主治医までご相談ください。

就労支援チーム

就労支援担当医師、リハビリ専門職からなる就労支援コーディネーターで構成される「就労支援チーム」が、病前に就労されていた方、復職または新規就労を希望している方を対象に、入院中の患者さんを直接サポートする主治医や担当療法士など「入院担当チーム」と連携しながら、患者さんそれぞれの状況に応じた復職までの支援を行っています。

また、退院後に『復職してみたが思うようにうまくいかない』『職場との復職調整がスムーズに進まない』『就労希望があっても自分にあった仕事が見つけられない』といったことがないよう、入院から退院後まで切れ目なく支援を継続させていただきます。

就労支援医師のご紹介

まずは、

現状の能力などを評価

復職へ向けた具体的な課題の整理

今後の方向性について検討

職場や通勤で必要とされる動作・作業の練習

結果を、

ご本人・ご家族、場合により就労先の職場などと情報共有

必要に応じて、職場の方も交えた復職支援会議を開催

ご希望の場合は、障がい者職業センターなど連携機関をご紹介

退院後も、

必要な方には外来リハビリ継続のご提案

関係機関への情報提供・ご紹介

社会福祉制度などの情報提供

就労に向けたリハビリテーション

ご本人が抱えておられる障害の状況に応じて、お一人お一人に合わせた評価や訓練を実施し、職業復帰上の課題や対策を一緒に検討していきます。

移動能力に障害のある方

麻痺や筋力低下による歩行障害など、移動能力に障害のある方

職場内での移動や立位姿勢での職務、通勤に影響します。

職場や通勤環境を詳細に伺い、必要となってくる動作や耐久性、安定性などをリハビリで確認し、訓練していきます。

上肢に麻痺がある方

OA作業訓練

上肢に麻痺がある方

パソコン作業や書字、書類整理、製品加工作業など上肢を使った職務動作に影響します。

上肢麻痺の機能訓練に加え、可能であれば従来業務に近い形での作業課題を通じて、業務内容により特化した動作の習得を目指します。重度麻痺により使用が困難な場合は、健側を用いた従来業務遂行の獲得も検討していきます。

プラグ・タップ組立訓練

注意障害・記憶障害などの高次脳機能障害のある方

見落とし誤りなどのミス、処理速度の低下などから、決められた時間に業務を正確に行うことが難しい場合があります。また遂行機能障害のある方では複数の課題を期日までに段取り良く計画的にこなす、などのスキルが低下し、病前に比べ要領が悪い、業務遂行に要す時間が長い、期日を守れない、などの問題が起きる場合もあります。

具体的な課題を見つけ、ミスを補う手段(補完手段と呼びます)の習得や業務量の調整・疲労コントロールなどの訓練が必要となってきます。

言語障害のある方

物品請求書作成訓練

失語症など言語コミュニケーションに障害のある方

指示を正確に聞きとる、報告や説明を適切に行う、など上司や同僚・顧客などとのやり取りで困難さを認める場合があります。特に言語のみでのやりとりを要求される電話応対や、複数人の会話に参加するスキルが求められる会議などで、困難さが目立つ場合があります。

お一人お一人に合わせて、事務系や軽作業など仕事場面を模した言語コミュニケーション課題を中心に訓練を行っていきます。ご希望のある方には、就労先に失語症の方へのかかわり方の情報提供や、職場での支援方法を提案させていただきます。

職業リハビリテーション「MWS」

復職について

職場へ復帰するタイミングに関しては、ご本人の職場との雇用状況、休職期間、会社側の受け入れ体制など、ご本人の障害や訓練状況以外の要素も関係してきます。

退院後すぐに復職する方ばかりではなく、しばらく外来リハビリテーションを経て復職する方、職場の上司・産業医などと話し合いを経て業務内容の調整や配置転換を職場と調整しながら復帰される方、残念ながらもとの職場への復帰は難しく退職し、障害者雇用枠での新規就労を目指す方、様々な方がおられます。

高次脳機能障害など復帰にあたってより細やかな検討が必要な場合は、当院で行った評価や訓練結果を情報提供させていただきながら、地域障害者職業センターなど職業復帰に特化した支援が行える各種連携施設をご紹介させていただく場合もございます。また患者さんご自身の希望や職場の方からの要望に応じて、復帰先の産業医・上司の方などへ現状説明や適切な支援方法をご提案することも可能です。

就労支援の具体例

脳卒中後、中等度の左片麻痺と軽度の注意障害を認めた50代男性患者さん

入院後2か月が経過しご自宅での自立生活の見通しが立ってきた頃より、病前のお仕事への復帰も念頭にしたリハビリや支援を開始いたしました。

課題の整理

まず、現在の雇用状況やご本人の復職への意欲や希望、病前の業務内容・通勤環境などを詳細に聞き取りさせていただき、復帰へ向けた個別プランを作製しました。。業務内容は座位でのパソコン作業が中心でスピードと正確さが要求されること、通勤は満員電車を使用し所要時間は1時間でした。

方向性の検討

左片麻痺と注意障害が従来業務の遂行や通勤にどの程度影響するのか評価を行いましたが、タイピングのスピードが遅く時々注意障害によるミスをしてしまうこと、通勤1時間の歩行耐久性が無い状況でした。ご本人と相談し、退院後早期の復職ではなく外来でしばらく課題へのリハビリを行い、復職を目指す方針となりました。

動作・作業の練習

上肢麻痺に対する機能訓練やタイピングなど業務内容に即した訓練、見直しや休憩をはさむなど注意障害の影響を補う手段の獲得、装具を使用しての屋外歩行訓練の強化を外来にて3か月行い、業務の遂行はややスピードが落ちるもののミスもなくおおむね実施が可能となってきました。

成果の共有

復職の見通しが立ってきたため、ご本人の希望により外来担当医師・担当チーム・就労支援チームと職場の方の面談の機会を設けました。具体的な現在の障害状況、従来業務はおおむね実施可能な状況だが復職開始早期は、業務量や通勤時間への配慮・テレワークの一部導入などが望ましいことをご説明いたしました。

復職

1か月後、週2回のテレワークと時短での出勤が認められ復職を達成されました。

退院後のフォローアップ

復帰後2か月間は月2回の外来リハビリを継続し、復帰後の困りごとや課題の確認とフィードバックなどを行いました。現状の形での業務継続が可能なことを確認し、リハビリを終了とさせていただきました。